記者コラム 「多事奏論」 くらし報道部記者・長沢美津子
「いま聞いておかないと、消えてしまう」。そう考えた関西の在日コリアンの女性たちは、親世代の2世を囲んで「料理と思いを記録する会」を始めた。
その人の伝えたいレシピを選んでもらい、一緒に手を動かして、こぼれでることばに耳を傾ける。
食の現場で、個人の技や知恵をどう受け継ぐかは大事なテーマだ。家のなかのことほど難しい。輪に入れてもらえるだろうか。エプロンを手に大阪に向かうと、20人ほどが集まった調理室は満員。「家で韓国料理を食べずに育った」という若い3世の姿もある。
会の主催「アプロ・未来を創造する在日コリアン女性ネットワーク」代表、朴君愛(パククネ)さん(66)の話は少し意外だった。「わたしには料理への複雑な気持ちが長くあって、それが会を始めることにつながったのです」
3世の朴さんは、高校まで日…